行政の厳しい指導「是正勧告」
2025年度以降、「働き方改革関連法」の施行状況を踏まえて、行政(労働基準監督署)の指導や監査もより厳格になってきています。特に就業規則の未整備や不備は、是正勧告の対象となることが多く、突然の調査やトラブルへの備えが不可欠です。
「是正勧告」は突然やってきますが、日頃から労働法令に即した就業規則の整備・運用をしておくことで防ぐことができます。2025年の働き方改革への対応として、最新の法改正を反映した就業規則の整備と、運用体制の点検が極めて重要です。
是正勧告とは?
「是正勧告(是正勧告書)」とは、労働基準監督官が事業所に立ち入り調査を行い、労働基準法などの法令違反を確認した場合に発せられる文書です。
主な特徴:
- 法的拘束力はないが、従わないと刑事罰の対象になることもある。
- 内容によっては、企業名の公表や労災保険料の割増の対象になる可能性もある。
- 基本的には、期限内の是正報告書の提出が求められる。
よくある是正勧告の指摘項目
以下のような違反は、特に是正勧告の対象となりやすいです:
| 違反項目 | 内容 |
|---|---|
| 労働時間管理の不備 | タイムカードがない、残業が黙認されているなど |
| 未払い残業代 | 名ばかり管理職やみなし残業の誤用 |
| 36協定の未締結または未届 | 残業が発生しているのに36協定がない |
| 就業規則の未作成・未届 | 常時10人以上の労働者がいるのに提出されていない |
| 有給休暇の不適切な運用 | 年5日付与がされていない、取得を妨げている |
| ハラスメント対策不備 | パワハラ・セクハラ防止措置が講じられていない |
突然発生する労使トラブルの例
行政の調査は、以下のような労使トラブルが発端となるケースが多いです:
- 退職した従業員からの「残業代未払い」の申告
- パワハラ・セクハラの社外通報(労基署や弁護士を通じて)
- SNSでの「ブラック企業告発」→マスコミ報道→調査
- 突然の業務中事故→労災認定→労基署の立入
- 派遣やパートからの差別待遇に関する相談
是正勧告を受けた場合の対応手順
- 落ち着いて内容を確認
指摘内容を正確に読み取り、どの法律のどの条文に違反しているかを把握します。 - 弁護士・社労士への相談
複雑な事案は専門家に即相談。初動対応を間違えると長期トラブルに発展します。 - 是正措置の実施
就業規則の見直し、36協定の再提出、未払い残業の支払いなど、事実に基づいた是正を行います。 - 是正報告書の提出
是正内容、対応日、再発防止策を明記した報告書を期限内に労基署へ提出します。
2025年以降に向けた対応のポイント
- 就業規則の整備(特にテレワーク・副業・同一労働同一賃金に関する規定)
- 36協定の正しい運用と届け出
- タイムカードや勤怠システムによる労働時間管理
- ハラスメント防止措置(相談窓口の設置)
- 労働者への説明責任と同意の履歴管理
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。