労働契約における就業規則の役割
2025年度の「働き方改革」や関連法改正に対応した就業規則の整備は、企業の法令遵守と健全な労務管理のために非常に重要です。以下、それぞれのポイントについてわかりやすく解説します。
労働契約における就業規則の役割
就業規則とは
会社が従業員に対して定める職場のルール・労働条件をまとめた文書です。
具体的には以下のような役割があります:
- 労働条件の明示(労働時間、賃金、休暇など)
- 懲戒処分・服務規律の規定
- 法定義務の履行(常時10人以上の労働者を使用する事業所は届出義務あり)
- トラブル予防と解決基準の提示
つまり、就業規則は労働契約(個々の雇用契約)のベースとなり、法的な補完機能も果たします。
労働契約が原因となる主な労使トラブル
主なトラブル例:
| トラブル内容 | 説明 |
|---|---|
| 賃金未払・支払方法の不明確さ | 残業代、割増賃金、手当の取り扱いなど |
| 解雇の正当性 | 就業規則に懲戒解雇の事由がなく、無効とされるケース |
| 労働時間の管理 | サービス残業や過重労働が問題化 |
| 有給休暇・育休取得をめぐる対応 | 拒否や妨害、ハラスメント等 |
| 労働条件の一方的変更 | 就業場所・賃金・役職の変更などで不利益を与える例 |
就業規則が不備だと、こうした争いの際に会社に不利に働くことが多くなります。
労働条件を統一的・画一的に定める就業規則とは
就業規則は、個別の労働契約とは異なり、企業全体や部門ごとに統一されたルールを定めるものです。
特徴:
- 労働契約法第7条・第8条に基づき、就業規則が労働契約の内容となる
- 労働条件の明確化と平等性の確保(差別的取扱い防止)
- トラブル時の判断基準となる
- 個別の交渉よりも効率的な労務管理が可能
就業規則による「合理的な不利益変更」は可能か?
原則として、不利益変更は慎重に扱う必要がありますが、以下の条件を満たすことで可能とされています。
労働契約法第10条の要件(合理性の判断基準):
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 変更の必要性 | 経営状況の変化、法改正への対応など |
| 内容の相当性 | 労働者に対する不利益の程度は最小限か |
| 代替措置の有無 | 賃金カットの代わりに他の手当を支給など |
| 労働者側の対応 | 労使協議、説明責任の履行状況など |
実務上の注意点:
- 労使協議を重ねることが重要
- 労働者の過半数代表者への意見聴取義務
- 一方的な変更では無効になるリスクがある
2025年以降の対応ポイント例
- 労働時間管理の厳格化(デジタル監視や医師面談義務化)
- 高年齢者の就業規則の明確化(70歳雇用確保措置関連)
- テレワーク制度の明文化
- 割増賃金率引上げ対象の拡大
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。