横浜みなとみらい社会保険労務士法人

総則の定め方

2025年度の「働き方改革法」に対応した就業規則の総則部分を定める際の一般的なポイントを整理しました。社会保険労務士の視点でのアドバイスも添えています。

総則の目的・定義・遵守義務について

▼ポイント

  • 就業規則の冒頭で「規程の目的」を明示することは必須です。
  • 「企業の秩序維持・労務管理の明確化」と「労働者の労働条件の明示・保護」が両立するように記載します。
  • 定義条項を設けることで、後半の規定の解釈が統一され、トラブル回避につながります。
  • 会社・労働者双方の遵守義務を明示し、ハラスメント防止・法令順守の姿勢を示すことが重要です。

▼例:

  • 本規則は、社員の労働条件を明確にし、職場の秩序を維持することを目的とする。
  • 「会社」とは株式会社〇〇をいい、「社員」とは後条に定める者をいう。
  • 会社と社員は本規則を誠実に遵守し、相互に協力して職務を遂行する。
社員の定義について

▼ポイント

  • 正社員・契約社員・パートタイマーなどの区分を明示する。
  • 派遣社員や業務委託者は対象外とする旨を記載しておくと誤解防止になる。
  • 雇用形態ごとの規程適用の有無(例:賞与や退職金など)を後続条項とリンクさせる。

▼例:

  • 「社員」とは、会社と直接雇用契約を締結した正社員、契約社員、パートタイマーを含む。
  • 派遣社員、業務委託契約者は本規則の対象外とする。
適用範囲について

▼ポイント

  • 「本規則はすべての社員に適用される」と原則を示す。
  • 勤務地や雇用形態で一部異なる取扱いがある場合は「別に定める就業規則または個別契約による」と補足。
  • 兼業・副業やテレワーク勤務者にも対応できるよう、範囲を広く取ることが望ましい。

▼例:

  • 本規則は、会社に雇用される全社員に適用する。
  • ただし、勤務地・雇用区分等により特別に定めた規則がある場合は、当該規則を優先する。
社会保険労務士からのアドバイス(特記事項)
  • ハラスメント対策義務化(パワハラ・セクハラ・マタハラ等)を踏まえ、総則に「安全で快適な職場環境を保持する」旨を明記することが推奨されます。
  • 2025年度の「働き方改革法」対応として、労働時間管理(勤務間インターバル制度・医師の面接指導の義務化等)を踏まえ、総則段階で「会社は労働者の健康確保を重視する」と明記すると、後続の労働時間規定との一貫性が出ます。
  • 「社員の定義」はトラブル防止の肝です。例えば「みなし社員」や「フリーランス的な働き方」が増えているため、誰が対象になるのか明確に線引きすることが重要です。
  • 就業規則は「労基署への届出」が必要となるため、総則部分で不明確な表現を避けることが行政調査・労使紛争防止につながります。
働き方改革関連法の概要

就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。

  • 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
≪多岐にわたる改正内容を一括審議するため、次の8つの法律を中心に構成されています≫
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
  • 労働契約法
  • パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
  • 雇用対策法
  • 労働時間等の設定に関する特別措置法
  • じん肺法

段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。

■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行

就業規則を運用するため顧問契約をご検討ください

働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりではありません。
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就業規則について質問がくることもあり、その際に回答ができなかったり、記載通りに運用できない場合は、メンテナンスが必要になります。
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。

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