横浜みなとみらい社会保険労務士法人

募集・選考の定め方

企業が持続的に成長するためには、適正な人材の採用が欠かせません。2025年度の「働き方改革法」では、採用段階から多様性・公平性を尊重し、労働関係法令の遵守が求められています。今回は、就業規則における「人材募集・選考」の定め方と、関連する主要な法律のポイントを社会保険労務士の視点から解説します。
人材募集・選考の定め方
  • 募集・採用は「公正・平等」に行うことを明文化し、性別・年齢・障がいの有無などによる差別的取り扱いを禁止。
  • 募集条件・応募資格を明確に記載し、採用基準は職務遂行能力に基づく合理的なものであることを明示。
  • 面接・試験など選考過程における個人情報の取扱いに留意し、採用後の労働条件通知書との整合性を確保。

▼社会保険労務士アドバイス
採用時のトラブル防止には「募集・選考の基準」を明文化することが重要です。特にSNSやWeb求人での表現が差別的と解釈されるケースが増加しています。職務内容・雇用形態・試用期間などを明確化し、応募者への説明責任を果たすことが信頼性向上につながります。

労働基準法に基づく留意点
  • 採用後は速やかに労働条件通知書を交付し、労働契約の内容を明示する義務があります。
  • 試用期間中であっても労働者としての地位があり、解雇には客観的合理性が求められます。
▼社会保険労務士アドバイス 試用期間を「本採用の前段階」と軽視するとトラブルのもとです。解雇や不採用の判断基準を就業規則で明確にし、採用後のフォロー体制(教育・研修)も整備しておくことで、法的リスクを大幅に減らせます。
障害者雇用促進法
  • 従業員数に応じた法定雇用率(2.5%)の確保が義務化。合理的配慮の提供義務があります。
  • 障がい者の募集・採用時には、障がい特性を理解した上で、適切な職務設計を行うことが求められます。
▼社会保険労務士アドバイス 形式的な雇用ではなく、実際の職務遂行が可能な体制を整えることが重要です。職場のバリアフリー化や職務分担の工夫を進め、行政機関(ハローワーク等)と連携して採用を支援しましょう。
男女雇用機会均等法
  • 募集・採用・昇進などすべての段階で性別による差別禁止が義務づけられています。
  • マタニティ・ハラスメント防止措置の整備が事業主の義務です。

▼社会保険労務士アドバイス
募集要項に「女性歓迎」「男性限定」などの文言を使用することはリスクがあります。性別にかかわらず能力と意欲を重視する採用基準を明文化し、社内研修で意識改革を行うことが必要です。

雇用対策法
  • 募集・採用時には年齢制限を設けないのが原則。ただし例外事由に該当する場合は明示が必要です。
  • 求人票や面接での年齢差別を避け、公正採用選考を徹底します。

▼社会保険労務士アドバイス
「若手歓迎」「ベテラン限定」といった表現も注意が必要です。採用基準は年齢ではなく、スキルや職務経験に基づくものとし、求人票の作成時には行政ガイドラインを確認しましょう。

高年齢者雇用安定法
  • 定年年齢を原則65歳まで引き上げる努力義務があり、70歳までの就業機会確保措置が求められます。
  • 再雇用制度・業務委託契約など多様な就業形態を検討する必要があります。

▼社会保険労務士アドバイス
人材不足時代において、高年齢者の活用は企業の強みになります。再雇用条件・労働条件の整合性を明確にし、健康管理と職務内容のマッチングを図ることで、長期的な戦力化が可能です。

働き方改革関連法の概要

就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。

  • 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
≪多岐にわたる改正内容を一括審議するため、次の8つの法律を中心に構成されています≫
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
  • 労働契約法
  • パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
  • 雇用対策法
  • 労働時間等の設定に関する特別措置法
  • じん肺法

段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。

■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行

就業規則を運用するため顧問契約をご検討ください

働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりではありません。
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就業規則について質問がくることもあり、その際に回答ができなかったり、記載通りに運用できない場合は、メンテナンスが必要になります。
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。

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