その他の労働契約の禁止行為
2025年度の働き方改革法では、企業に求められるコンプライアンス基準が一段と厳格化します。特に「労働契約の禁止事項」は、就業規則の見直しにおいて必ず押さえておきたい重要ポイントです。無効となる契約内容を正しく理解することで、トラブル防止と適正な労務管理が実現します。本記事では、労働基準法に基づく禁止事項を分かりやすく解説します。
労働契約における禁止事項とは
- 労働強制の禁止(労働基準法5条)
- 長期労働契約の制限(労働基準法14条・70条)
- 退職時の違約金契約の禁止(労働基準法16条)
労働強制の禁止(労基法5条)
- 暴行・脅迫・監禁などにより労働を強制することは、最も重い処罰の対象となります。企業はあらゆる形で労働者の意思を尊重し、強制労働につながる行為を排除しなければなりません。
▼社会保険労務士アドバイス
強制労働は就業規則の問題を超え、企業の社会的信用を失墜させる重大リスクです。パワハラ防止措置義務とも密接に関連するため、管理職への研修や相談窓口の整備が不可欠です。「強制」に該当しうる行為を具体例として示すなど、社内ルールを明文化しておくと未然防止につながります。
3年を超える労働契約が認められるケース(労基法14条・70条)
- 一定の事業では、完成までに長期間を要するケースなどに限り、3年を超える労働契約が認められています。工事・研究開発など「事業の性質上、一定の長期間が必要」と判断される場合が対象となります。
▼社会保険労務士アドバイス
「一定の事業」の判断は企業が自由に決められるものではなく、事業の性質が客観的に長期期間を要することが前提です。契約書には、当該事業が長期契約を必要とする理由や業務内容を明確に記載することが重要です。また、事業終了時の契約関係や更新・中途終了のルールも併せて定めることでトラブル防止につながります。
- 職業訓練を受ける労働者については、訓練期間中に限り3年を超える契約が可能です。長期的な専門技能の習得に要する期間が契約期間の設定根拠となります。
最長5年まで認められるケース(高度専門知識を有する者)
- 高度な専門的知識・経験を有し、厚生労働大臣が定める業務に従事する者については、最長5年までの労働契約が認められています。研究者・デザイナー・システム開発専門職など、高度専門職が主な対象です。
▼社会保険労務士アドバイス
高度専門職は業務の継続性や成果創出に長期間を要するため、5年契約が認められていますが、対象範囲は法律・告示で明確に定義されています。企業判断だけで「高度専門職」として扱うことは危険で、資格・実務経験・担当業務を根拠づけ、契約書に詳細を記載することが必須です。誤った運用は労働契約そのものが無効となる可能性があります。
満60歳以上の労働者との契約
- 満60歳以上の労働者については、労基法上の特例により3年を超える労働契約を締結することが可能です。高年齢者の働き方の多様化を踏まえ、柔軟な契約期間が認められています。
▼社会保険労務士アドバイス
高年齢労働者は健康状態・生活状況が個々に大きく異なるため、長期契約であっても無理のない勤務条件の設定が重要です。また、定期的な面談や健康管理の仕組みを就業規則に盛り込むことで、安全配慮義務の履行にもつながります。更新・再契約の判断基準も明文化しておくと、双方にとって安心して働ける環境づくりが可能です。
退職時の違約金契約の禁止(労基法16条)
- 「退職したら○万円支払う」「途中退職にはペナルティを課す」などの契約は、労働基準法により無効とされています。労働者の退職の自由を不当に制限することになるため、企業は金銭的な縛りを設けることはできません。
▼社会保険労務士アドバイス
退職トラブルを防ぐには、違約金ではなく「退職手続きのルール化」が重要です。退職申出期限、業務引継ぎの流れ、貸与物返却などを就業規則に整理することで、双方が納得した形での退職が実現します。また研修費用などの費用負担を求める場合は、厚生労働省のガイドラインを踏まえ慎重に設計する必要があります。
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。