採用時の提出書類の定め方
2025年度からの働き方改革法により、採用後の労務管理は一層の適正化が求められます。特に、採用時に提出を求める書類は、法令遵守や従業員管理の基盤となる重要な情報です。本記事では、住民票記載事項証明書・身元保証書・健康診断書・税務・社会保険書類など、必要書類の取り扱いと就業規則への明記ポイントを、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。
採用時に提出を求める書類の定め方と就業規則への明記
- 採用時には、提出書類の内容確認が労務管理の出発点となります。書類が提出されない場合は、事実確認ができず、採用要件を満たさないものとして採用取消しの対象となり得ることを就業規則に明記します。
▼社会保険労務士アドバイス
採用取消しは慎重に扱うべき措置のため、書類提出の期限や再提出依頼の手順を必ず規定しておくことが望ましいです。また、提出書類の目的や利用範囲を明確に伝えることで、労働者の納得性が高まり、後のトラブル防止に繋がります。就業規則と採用通知書の双方で同じルールを定めておくと、法的なリスクを最小化できます。
住民票記載事項証明書
- 住所・氏名等の基本情報を正確に把握するため、入社時に住民票記載事項証明書の提出を求めます。提出期限と取扱い方法を就業規則に明示します。
▼社会保険労務士アドバイス
個人情報の取り扱いに配慮し、目的を「労務管理・社会保険手続き」に限定して記載しておくと安心です。原本返却の有無や保管期間を定めておくことで、個人情報保護法の観点からも適正な運用ができます。
身元保証書(契約期間の定めの有無)
- 業務上の損害や不正防止の観点から、一定の責任を求めるために身元保証書の提出を求める場合があります。保証期間は通常3年以内とし、更新の運用も規定します。
▼社会保険労務士アドバイス
身元保証法に基づき、保証の範囲を就業規則で明確に定めることが重要です。過大な責任を負わせるのは違法となるため、損害額の上限や重大な過失がある場合のみ適用など、合理的な範囲設定を行いましょう。
健康診断書
- 配置予定の業務を遂行できる健康状態であるか確認するため、入社時の健康診断書を求めます。業務遂行への支障の有無のみを判断し、病名は不要とします。
▼社会保険労務士アドバイス
健康情報は機微情報に該当するため、取り扱いは厳重に行う必要があります。診断結果に基づく差別的取扱いは禁じられており、合理的配慮の観点から職場環境の調整が必要なケースもあります。事前に運用指針を整えておくとスムーズです。
税務・社会保険関係書類
- 扶養控除申告書・雇用保険資格取得書類・年金手続き関連書類などは入社直後の提出が不可欠です。提出遅延があると会社の各種申請期限に影響するため、提出期限を明確に示します。
▼社会保険労務士アドバイス
税務・社会保険手続きは期限が厳格なため、記入方法の案内や確認フローを用意しておくと従業員側も安心です。電子申請が主流となるため、会社側の記入補助体制を整えることで手続きミスを防ぎ、迅速な対応が可能になります。
採用決定者に提出を求める主な書類一覧
一般的に「採用決定者(内定者)」に提出を求める書類一式を、社会保険労務士の実務で整理されている分類に基づいてまとめました。
企業規模や業種により追加・削除がありますが、通常よく使用されるものを網羅しています。
① 本人確認・身元確認に関する書類
- 住民票記載事項証明書(または住民票の写し)
- 本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカード等)
- マイナンバー提供書(※番号は厳重管理が必要)
- 身元保証書(保証期間の明記/保証人の署名押印)
② 健康状態の確認に関する書類
- 入社時健康診断書
- 配置転換・業務遂行可否に関する医師意見書(必要な場合のみ)
- 健康保険被扶養者申請に関する必要書類(扶養家族がいる場合)
③ 税務・社会保険手続きのための書類
- 扶養控除等(異動)申告書
- 源泉徴収票(前職がある場合)
- 雇用保険被保険者番号の申告書(または雇用保険被保険者証)
- 年金手帳(基礎年金番号の確認用 ※原本は提出させず番号確認のみ)
- 健康保険・厚生年金保険資格取得届に必要な書類一式
- 通勤経路申告書(通勤手当の計算用)
④ 企業で必要とされる誓約・契約関係書類
- 雇用契約書(または労働条件通知書)
- 機密保持誓約書(NDA)
- 個人情報取扱いに関する同意書
- 会社備品の貸与に関する同意書
- 反社会的勢力でないことの表明・確約書
- 就業規則・社内ルール確認書(遵守誓約書)
⑤ 給与振込・緊急連絡先など実務運用に必要な書類
- 給与振込口座届
- 緊急連絡先届
- 勤務開始日・必要資格の写し(資格職の場合)
- 配属に必要な免許・資格証のコピー(薬剤師、看護師、運転業務など)
業種によって追加されることがある書類(例)
- 運転業務 → 運転記録証明書、免許証の有効期間の確認書
- 医療・介護 → 資格証明書、感染症検査結果(任意)
- 食品関連 → 健康状態申告書
- 教育・保育 → 身体検査書、資格証明書、前歴調査書
- 建設業 → 技能講習修了証、特別教育修了証
- セキュリティ業務 → 経歴書、本人照会追加資料
採用時の提出書類は、就業規則や採用通知書に「提出しない場合は採用取り消しもあり得る」旨を明記しておくことが重要です。
特に個人情報・健康情報・マイナンバーは厳格な管理が必要なため、提出目的・保管方法・廃棄手順を文書化し、企業が適正に扱う体制を示すことで、法令遵守とトラブル防止につながります。
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。