横浜みなとみらい社会保険労務士法人

労働時間の特例と間違いやすい労働時間

2026年度の働き方改革関連法への対応では、「労働時間に該当するかどうか」の判断が重要です。教育・研修や健康診断、待機時間などは、運用を誤ると未払い残業や労基署指導につながる可能性があります。就業規則には、労働時間の定義や取り扱いを明確に定め、会社と従業員双方の認識を統一することが求められます。

教育・研修の時間
  • 会社が参加を義務付けている教育・研修は、原則として労働時間に該当します。業務命令として参加する場合は、就業時間外であっても賃金支払いの対象になります。
  • 自由参加としていても、実質的に参加しないと不利益がある場合は労働時間と判断される可能性があります。実態に即した運用が重要です。

▼社会保険労務士アドバイス
研修を「任意参加」と記載していても、昇進評価や人事査定に影響する場合は労働時間とみなされることがあります。就業規則には、参加義務の有無や賃金支払いの取扱いを明確に定め、運用実態と一致させることが重要です。

健康診断の時間
  • 一般健康診断の受診時間は、法令上当然に労働時間となるわけではありません。ただし、会社指定で勤務時間中に受診する場合は賃金支払い対象とする企業も多くあります。
  • 特殊健康診断や深夜業従事者健診など、法令で義務付けられた健康診断は、実務上労働時間として扱うことが望ましいとされています。

▼社会保険労務士アドバイス
健康診断の取り扱いが曖昧だと、従業員とのトラブルにつながります。特に特殊健康診断については、安全配慮義務の観点からも労働時間扱いを検討し、受診方法や賃金支給の有無を就業規則へ明記しておくと安心です。

自発的残業
  • 従業員が自主的に残業しているように見えても、会社が黙認している場合は労働時間と判断される可能性があります。上司の把握状況が重要です。
  • 持ち帰り業務やPCログイン記録などから、実態として労働時間が認定されるケースもあります。管理体制の整備が必要です。

▼社会保険労務士アドバイス
「勝手に残っていただけ」という説明は、労基署や裁判では認められにくい傾向があります。残業申請制を導入するだけでなく、実際に不要な残業を制止する運用や、PCログ管理など客観的記録の整備が重要です。

昼休みの来客当番
  • 昼休みに電話対応や来客対応を命じている場合、その時間は労働から完全に解放されていないため、休憩時間として認められない可能性があります。
  • 交代制であっても、待機義務や対応義務がある場合は労働時間に該当することがあります。実態確認が必要です。

▼社会保険労務士アドバイス
休憩時間は「自由利用」が原則です。昼休み当番を設ける場合は、別途休憩時間を確保する、あるいは当番時間を労働時間として扱うなど、法令に沿った設計が必要です。特に少人数事業場では注意が必要です。

安全・衛生委員会の開催時間
  • 安全委員会や衛生委員会への出席は、会社の指示による業務として行われるため、通常は労働時間に該当します。
  • 就業時間外に開催する場合は、時間外労働として割増賃金の対象になる可能性があります。

▼社会保険労務士アドバイス
委員会活動は法令上必要な取り組みですが、開催時間の設定を誤ると未払い残業問題につながります。可能な限り所定労働時間内で開催し、議事録保存とあわせて適切な労務管理を行うことが重要です。

任意に出勤して従事した消火作業時間
  • 従業員が災害時に自主的に出勤し消火活動を行った場合でも、会社の指揮命令下にあれば労働時間と判断されることがあります。
  • 事前に防災対応ルールや緊急時の出勤基準を定めておくことが重要です。

▼社会保険労務士アドバイス
災害時対応は善意に依存しやすいですが、実際には労災や賃金問題へ発展するケースがあります。緊急対応時の指揮命令系統や賃金の取扱いを就業規則や防災規程で明文化しておくことをおすすめします。

交替で仮眠を取るドライバー
  • 長距離ドライバーなどが交替制で仮眠を取る場合でも、緊急時に直ちに対応しなければならない状態では、労働時間と判断されることがあります。
  • 完全に業務から解放されているかどうかが、労働時間性の判断ポイントになります。

▼社会保険労務士アドバイス
運送業は2024年問題以降、拘束時間管理が厳格化されています。仮眠時間や待機時間の管理方法を誤ると改善基準告示違反につながる可能性があります。デジタコや運行記録との整合性確認も重要です。

その他の注意事項
  • 労働時間は「会社の指揮命令下に置かれている時間」で判断されます。名称ではなく実態で判断される点に注意が必要です。
  • テレワークや持ち帰り業務など、見えにくい労働時間の管理も重要になっています。客観的記録の整備が求められます。

▼社会保険労務士アドバイス
働き方改革関連法への対応では、就業規則の整備だけでなく、実際の運用との一致が非常に重要です。勤怠管理システムやPCログ、申請ルールなどを含め、実態に即した労務管理体制を構築することで、労務トラブル防止につながります。

働き方改革関連法の概要

就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。

  • 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
≪多岐にわたる改正内容を一括審議するため、次の8つの法律を中心に構成されています≫
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
  • 労働契約法
  • パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
  • 雇用対策法
  • 労働時間等の設定に関する特別措置法
  • じん肺法

段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。

■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行

就業規則を運用するため顧問契約をご検討ください

働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりではありません。
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就業規則について質問がくることもあり、その際に回答ができなかったり、記載通りに運用できない場合は、メンテナンスが必要になります。
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。

上部へスクロール