横浜みなとみらい社会保険労務士法人

専門業務型裁量労働制の定め方

専門業務型裁量労働制は、対象業務や労働時間のみなし方を適切に定めることで、専門性の高い働き方に対応できる制度です。一方で、就業規則や労使協定、健康確保措置の整備が不十分なまま運用すると、労務トラブルにつながる場合があります。

裁量労働制とは
  • 裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず、労使協定などで定めた時間を労働したものとみなす制度です。業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要がある場合に活用されます。
  • 裁量労働制を導入しても、会社が労働時間の状況を把握しなくてよいわけではありません。長時間労働の防止や健康管理のため、勤怠管理や業務量の確認は引き続き重要です。
  • 制度の対象となる業務や手続きは法律で定められており、会社が自由に対象者を決められるものではありません。就業規則や労使協定の内容を確認したうえで、慎重に導入する必要があります。

▼社会保険労務士アドバイス
裁量労働制は「残業代を支払わなくてよい制度」と誤解されやすい点に注意が必要です。深夜労働や休日労働の割増賃金、労働時間の状況把握、健康確保措置は別途確認が必要です。導入前に就業規則、賃金規程、勤怠管理の運用を整理しておくことが大切です。

労使協定で定めるべき事項
  • 専門業務型裁量労働制を導入する場合、対象業務、みなし労働時間、業務遂行の手段や時間配分について具体的な指示をしないことなどを、労使協定で定める必要があります。
  • 令和6年4月1日以降は、本人同意の取得、同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止、同意の撤回に関する事項なども重要な協定事項とされています。
  • 労使協定では、健康・福祉確保措置、苦情処理措置、記録の保存、有効期間なども定めます。協定締結後は、労働基準監督署への届出が必要となる点にも注意が必要です。

▼社会保険労務士アドバイス
労使協定は形式的に作成するだけでは不十分です。実際の業務内容、労働時間の実態、対象者の同意取得方法、撤回時の取扱いまで整合しているか確認しましょう。協定書、就業規則、雇用契約書の内容に矛盾があると、制度運用の適法性が問題となる場合があります。

専門業務型裁量労働制とは
  • 専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある専門的な業務について、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。
  • この制度は、専門性が高い業務であっても、使用者が業務の進め方や時間配分について具体的な指示を行っている場合には、適用が難しくなる場合があります。
  • 導入にあたっては、対象業務に該当するかだけでなく、実際の働き方が制度の趣旨に合っているかを確認することが重要です。名称だけで判断しないよう注意が必要です。

▼社会保険労務士アドバイス
専門業務型裁量労働制は、専門職に見える職種であれば一律に使える制度ではありません。上司が日々の作業手順や時間配分を細かく指示している場合、制度趣旨と合わない可能性があります。職務記述書や業務指示の実態を確認し、対象者ごとに適用可否を検討しましょう。

専門業務型裁量労働制の対象業務
  • 対象業務は、研究開発、情報処理システムの分析・設計、新聞・出版の取材編集、デザイナー、プロデューサー、コピーライターなど、法令等で定められた業務に限られます。
  • 対象業務に近い職種名であっても、実際には補助的業務や定型的業務が中心である場合、専門業務型裁量労働制の対象とならない可能性があります。
  • 複数の業務を兼務している場合は、対象業務に実際に従事しているか、対象外業務の割合が大きくないかを確認する必要があります。業務内容の整理が重要です。

▼社会保険労務士アドバイス
対象業務の判断では、職種名ではなく実際の業務内容を確認することが大切です。求人票や雇用契約書の肩書きだけで判断せず、日々の業務、指示系統、成果物、定型業務の有無を整理しましょう。対象業務に該当するか迷う場合は、導入前に専門家へ相談することをおすすめします。

健康・福祉確保措置と苦情処理措置の実施
  • 専門業務型裁量労働制を導入する場合、対象労働者の労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を実施する必要があります。長時間労働を放置しない仕組みが求められます。
  • 健康・福祉確保措置としては、勤務間インターバル、深夜労働の制限、代償休日の付与、健康診断、相談窓口の設置などが考えられます。会社の実態に応じた設計が必要です。
  • 苦情処理措置では、申出窓口、担当者、対象となる苦情の範囲、処理手順を明確にしておくことが重要です。対象者が安心して相談できる体制づくりが求められます。

▼社会保険労務士アドバイス
健康・福祉確保措置は、協定に書くだけでなく実際に運用することが重要です。勤怠システムで労働時間の状況を把握し、一定時間を超えた場合の面談や業務調整の基準を設けましょう。苦情処理の記録も残しておくことで、労務トラブル予防につながります。

対象業務に従事した場合の適用
  • 専門業務型裁量労働制は、労使協定で定めた対象業務に実際に従事した場合に適用されます。対象業務に該当しない日や業務については、通常の労働時間管理が必要となる場合があります。
  • 対象者であっても、会社が具体的な作業手順や時間配分を細かく指示している場合、裁量労働制としての運用に問題が生じる可能性があります。
  • 対象業務と対象外業務が混在する場合は、業務分担や勤務実態を整理し、制度適用の範囲を明確にしておくことが必要です。あいまいな運用は避けるべきです。

▼社会保険労務士アドバイス
対象者として協定に記載していても、実際の業務が対象業務でなければ制度適用が認められない場合があります。月ごとの業務内容や指示の実態を確認し、対象外業務が増えている場合は通常の労働時間管理へ切り替えるなど、柔軟な運用ルールを整備しましょう。

その他の注意事項
  • 専門業務型裁量労働制を導入する場合でも、深夜労働、休日労働、休憩、年次有給休暇、安全配慮義務などの労務管理は引き続き必要です。
  • みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、割増賃金や36協定との関係を確認する必要があります。給与計算業務にも影響するため、事前の整理が欠かせません。
  • 制度導入後も、対象者の同意、同意の撤回、労働時間の状況、健康・福祉確保措置、苦情処理措置などについて、適切に記録を保存することが求められます。

▼社会保険労務士アドバイス
専門業務型裁量労働制は、導入時だけでなく運用後の点検が重要です。就業規則、労使協定、賃金規程、勤怠管理、給与計算が一体として整っているか確認しましょう。制度改正や行政通達により必要事項が変わる場合もあるため、定期的な見直しが労務リスクの低減につながります。

働き方改革関連法の概要

就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。

  • 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
≪多岐にわたる改正内容を一括審議するため、次の8つの法律を中心に構成されています≫
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
  • 労働契約法
  • パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
  • 雇用対策法
  • 労働時間等の設定に関する特別措置法
  • じん肺法

段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。

■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行

就業規則を運用するため顧問契約をご検討ください

働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりではありません。
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就業規則について質問がくることもあり、その際に回答ができなかったり、記載通りに運用できない場合は、メンテナンスが必要になります。
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。

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