横浜みなとみらい社会保険労務士法人

1年単位の変形労働時間制の定め方

1年単位の変形労働時間制は、繁忙期と閑散期に応じて労働時間を配分できる制度です。一方で、就業規則や労使協定、年間カレンダー、労働基準監督署への届出など、導入時に確認すべき事項が多くあります。本記事では、定め方の実務ポイントをわかりやすく解説します。

1年単位の変形労働時間制とは
  • 1年単位の変形労働時間制は、1か月を超え1年以内の対象期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間以内となるように労働時間を定める制度です。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
  • 通常は1日8時間、1週40時間を超える労働は時間外労働となりますが、この制度では協定で定めた特定の日や週に限り、法定労働時間を超える設定が可能です。
  • 繁忙期と閑散期が明確な業種では活用しやすい制度ですが、年間の労働日、労働時間、休日を事前に特定する必要があるため、計画的な運用が求められます。

▼社会保険労務士アドバイス
1年単位の変形労働時間制は、残業代削減だけを目的に導入すると運用上のトラブルにつながる場合があります。就業規則、労使協定、年間カレンダー、勤怠管理の整合性を確認し、実際の勤務実態に合った制度設計を行うことが大切です。

1週48時間を超える場合の要件
  • 1年単位の変形労働時間制では、1日の所定労働時間は原則10時間、1週間の所定労働時間は52時間が上限とされています。
  • 対象期間が3か月を超える場合に1週48時間を超える週を設定するときは、連続する週数や3か月ごとの回数について一定の制限があります。
  • 具体的には、週48時間を超える週は連続3週以内とし、対象期間を初日から3か月ごとに区分した各期間で、週48時間を超える週の初日は3回以内とする必要があります。

▼社会保険労務士アドバイス
1週48時間を超える設定は、年間カレンダー作成時に誤りが起きやすい部分です。特に3か月ごとの区分管理や連続週数の確認が必要です。給与計算や勤怠システムにも影響するため、制度導入前にチェック表で確認することをおすすめします。

労使協定の締結
  • 1年単位の変形労働時間制を導入するには、使用者と労働者代表との間で労使協定を締結する必要があります。労働者代表の選出方法にも注意が必要です。
  • 労使協定には、対象労働者の範囲、対象期間、起算日、労働日、各労働日の労働時間、有効期間などを明確に定めることが必要です。
  • 年間カレンダーで労働日や休日を示す場合でも、協定内容とカレンダーの内容が一致していなければ、運用上の問題が生じる場合があります。

▼社会保険労務士アドバイス
労使協定は形式的に作成するだけでは不十分です。特に対象者の範囲、起算日、労働時間の総枠、休日数は、就業規則や実際の勤務表と照合する必要があります。従業員代表の選出手続きも、後日の労務トラブル予防の重要な確認点です。

労使協定の届出
  • 締結した労使協定は、対象期間の起算日までに、事業場所在地を管轄する労働基準監督署へ届け出る必要があります。
  • 届出にあたっては、協定届、労使協定書、1日の所定労働時間や休日がわかる年間カレンダーなどを準備することが一般的です。
  • 常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則にも制度の内容を定め、変更届の提出が必要となる場合があります。

▼社会保険労務士アドバイス
届出が遅れると、制度を予定どおり適用できないリスクがあります。毎年更新する会社では、年度開始前に協定締結、カレンダー確定、労働基準監督署への届出を完了できるよう、社内スケジュールを早めに組むことが重要です。

所定労働日数の年間280日制限
  • 対象期間における労働日数の限度は、原則として1年間で280日です。対象期間が3か月以内の場合は、この労働日数制限は適用されません。
  • 対象期間が1年未満の場合は、280日に対象期間中の暦日数を乗じ、365で割って算出した日数が上限となります。端数処理にも注意が必要です。
  • 前年に1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、前年協定との関係で、労働日数の限度がさらに制限される場合があります。

▼社会保険労務士アドバイス
年間280日以内であっても、週平均40時間の総枠を超えていないかは別途確認が必要です。休日数、1日の所定労働時間、祝日の扱いを踏まえて年間カレンダーを作成し、給与計算や勤怠管理に反映できる状態にしておきましょう。

対象期間は区別することが可能
  • 対象期間は1か月を超え1年以内で設定できるため、必ずしも1年間にする必要はありません。3か月、6か月、年度単位など、業務実態に応じた設定が可能です。
  • 対象期間を1か月以上の期間に区分する場合、最初の期間の労働日と各労働日の労働時間を定め、以後の期間は労働日数と総労働時間を定める方法があります。
  • 区分した場合でも、後の期間の労働日や労働時間は、その期間が始まる少なくとも30日前までに、労働者代表の同意を得て書面で定める必要があります。

▼社会保険労務士アドバイス
対象期間を区分する方法は柔軟性がありますが、後から自由に勤務日を変更できる制度ではありません。30日前までの特定手続きや労働者代表の同意を忘れると、制度の適法性に疑義が生じる場合があります。社内の運用ルールを明確にしましょう。

特定期間は連続して労働させることが可能
  • 1年単位の変形労働時間制では、対象期間のうち特に業務が繁忙な期間を、労使協定で特定期間として定めることができます。
  • 連続労働日数は原則として最長6日ですが、特定期間を設けた場合は、1週間に1日の休日が確保できる日数、最長12日まで可能とされています。
  • ただし、対象期間の相当部分を特定期間とするような定め方は制度趣旨に反する可能性があり、途中で特定期間を変更することも認められないとされています。

▼社会保険労務士アドバイス
特定期間は繁忙期対策として有効ですが、長時間労働や休日不足につながりやすい部分です。健康管理、36協定、残業時間の上限規制、年次有給休暇の取得状況もあわせて確認し、無理のない人員配置を検討することが大切です。

対象期間に途中入社または途中退社する場合
  • 対象期間の途中で入社した従業員や途中で退職した従業員についても、1年単位の変形労働時間制の適用対象となる場合があります。
  • 実際に労働した期間を平均して1週間あたり40時間を超える場合は、その超えた時間について割増賃金の清算が必要です。
  • 途中入社者は対象期間終了時、途中退職者は退職時に清算するのが基本です。異動により対象制度が変わる場合も確認が必要です。

▼社会保険労務士アドバイス
途中入社・途中退社の清算は、給与計算で見落とされやすい項目です。対象期間全体ではなく、実際に制度を適用した期間で週平均40時間を超えていないかを確認します。退職時精算に備え、勤怠データを正確に保管しておくことが重要です。

労使協定の記載例(年間カレンダーで通知する場合)
  • 労使協定には、対象期間、起算日、対象労働者、労働日、各労働日の労働時間、有効期間などを記載し、年間カレンダーを別紙として添付する方法があります。
  • 年間カレンダーには、出勤日、休日、各日の所定労働時間を明確に表示します。従業員が自分の勤務日と労働時間を確認できる内容にすることが重要です。
  • 記載例としては、「各日の労働日および労働時間は、別紙年間カレンダーのとおりとする」と定め、協定書とカレンダーを一体で管理します。

▼社会保険労務士アドバイス
年間カレンダーで通知する場合は、協定届に添付するカレンダーと従業員へ周知するカレンダーが一致しているか確認してください。部署別や職種別に勤務パターンが異なる場合は、対象者ごとの区分を明確にし、就業規則にも反映させることが大切です。

その他の注意事項
  • 1年単位の変形労働時間制を導入しても、協定で定めた時間を超えて労働させた場合や、法定労働時間の総枠を超えた場合は、割増賃金の支払いが必要です。
  • 育児、介護、職業訓練、教育を受ける労働者など、特別の配慮を要する従業員については、必要な時間を確保できるよう配慮が求められます。
  • 導入後は、就業規則、労使協定、36協定、勤怠システム、給与計算ルールを定期的に見直し、実際の運用とずれがないか確認することが重要です。

▼社会保険労務士アドバイス
制度導入後も、勤務実績が年間カレンダーどおりになっているかを継続的に確認する必要があります。急な休日変更や勤務時間変更が多い会社では、変形労働時間制の要件を満たさなくなる場合があります。定期的な労務相談で運用状況を確認しましょう。

働き方改革関連法の概要

就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。

  • 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
≪多岐にわたる改正内容を一括審議するため、次の8つの法律を中心に構成されています≫
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
  • 労働契約法
  • パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
  • 雇用対策法
  • 労働時間等の設定に関する特別措置法
  • じん肺法

段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。

■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行

就業規則を運用するため顧問契約をご検討ください

働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりではありません。
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就業規則について質問がくることもあり、その際に回答ができなかったり、記載通りに運用できない場合は、メンテナンスが必要になります。
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。

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