1カ月単位の変形労働時間制の定め方
1カ月単位の変形労働時間制は、月内の繁閑に応じて労働時間を柔軟に設定できる制度です。ただし、就業規則への規定、労使協定の届出、各日・各週の労働時間の特定など、導入時には慎重な確認が必要です。
就業規則に規定して導入する
- 1カ月単位の変形労働時間制は、就業規則または労使協定に必要事項を定めることで導入できます。就業規則で導入する場合は、対象者、変形期間、起算日、労働日ごとの労働時間を明確にすることが重要です。
- 就業規則に規定する際は、「繁忙期は長めに働き、閑散期は短めに働く」という考え方だけでは不十分です。変形期間内の各日および各週の労働時間を、あらかじめ特定しておく必要があります。
- 常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成・変更した場合、所轄労働基準監督署への届出が必要です。制度内容を社内に周知することも、適正運用の前提となります。
▼社会保険労務士アドバイス
就業規則に制度名だけを記載しても、実務上は不十分となる場合があります。勤務カレンダーやシフト表との整合性、始業・終業時刻、休憩時間の定め方まで確認し、給与計算や勤怠管理で誤りが出ない形に整えることが大切です。
労使協定の届出
- 1カ月単位の変形労働時間制は、労使協定によって導入することも可能です。この場合、労働者代表との協定締結だけでなく、所轄労働基準監督署長への届出が必要とされています。
- 労使協定には、対象労働者の範囲、変形期間、起算日、変形期間中の各日・各週の労働時間などを定めます。対象者をあいまいにすると、制度の適用範囲をめぐるトラブルにつながる場合があります。
- 労使協定で制度を定めた場合でも、実際に従業員へその勤務を命じるには、就業規則や雇用契約との整合性確認が必要です。制度導入と労働条件の明示は、別々に確認することが大切です。
▼社会保険労務士アドバイス
労使協定を締結する際は、労働者代表の選出方法にも注意が必要です。管理監督者が代表になっていないか、民主的な手続きで選ばれているかを確認し、協定書・届出書・勤務表を一体で管理することが望ましいです。
業務繁閑による場合の具体的設定
- 業務の繁閑に応じて制度を活用する場合、月初や月末、締日付近、繁忙曜日などを踏まえて労働時間を設定します。単に「忙しい日は長くする」という運用ではなく、事前に具体的な勤務日程を定める必要があります。
- 例えば、月末に業務が集中する企業では、月末週の所定労働時間を長めに設定し、月初や中旬に短時間勤務や休日を配置する方法があります。ただし、変形期間全体で法定労働時間の総枠内に収める必要があります。
- シフト制の職場では、各人ごとに勤務日や労働時間が異なるため、シフト表の作成時点で労働時間を特定する運用が重要です。急な変更が多い場合は、制度運用の適法性について確認が必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
繁閑対応を目的に導入する場合、勤怠システムや勤務表の作成ルールを整えることが効果的です。予定労働時間と実労働時間の差、残業代の計算方法、休日振替の扱いを事前に整理しておくと、労務トラブルを防ぎやすくなります。
労働時間の限度
- 1カ月単位の変形労働時間制では、1カ月以内の一定期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間以内となるように設定します。一定の特例措置対象事業場では44時間となる場合があります。
- 制度を導入すると、あらかじめ定めた特定の日や週について、1日8時間または週40時間を超える所定労働時間を設定できる場合があります。ただし、変形期間全体の総枠を超えることはできません。
- 変形期間の途中で勤務予定を変更した結果、法定労働時間の総枠を超えた場合や、あらかじめ特定していない長時間勤務をさせた場合は、時間外労働として割増賃金の確認が必要になる場合があります。
▼社会保険労務士アドバイス
労働時間の限度は、制度導入時だけでなく毎月の勤務表作成時にも確認が必要です。特に月の日数によって総枠が変わるため、給与計算担当者と勤怠管理担当者が同じ基準でチェックできる体制を整えることが重要です。
具体的な就業規則の規定例
- 規定例としては、「会社は、業務の都合により、毎月1日を起算日とする1カ月単位の変形労働時間制を採用することがある」と定める方法があります。対象者や適用部署は具体的に記載することが望ましいです。
- 続けて、「各日の始業・終業時刻、休憩時間および休日は、変形期間開始前に勤務表により明示する」と定めることで、勤務カレンダーやシフト表との関係を整理しやすくなります。
- さらに、「変形期間を平均し、1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲で定める」と記載し、法定労働時間の総枠を超えない運用であることを明確にしておくことが大切です。
▼社会保険労務士アドバイス
規定例はそのまま流用せず、自社の勤務実態に合わせて調整することが必要です。固定勤務、シフト勤務、部署別勤務などで必要な条文が異なるため、就業規則の変更時には労務相談を活用し、実態と規定のズレを防ぎましょう。
その他の注意事項
- 1カ月単位の変形労働時間制を導入しても、深夜労働、休日労働、法定時間外労働に関する割増賃金の取扱いが不要になるわけではありません。36協定の要否も含めて確認が必要です。
- 年少者、妊産婦、育児・介護中の従業員などについては、労働時間の制限や配慮が必要となる場合があります。制度の対象者を一律に決めるのではなく、個別事情を踏まえた運用が大切です。
- 制度導入後は、勤務表の事前明示、労働時間の実績管理、残業代計算、就業規則との整合性を継続的に確認します。運用が形骸化すると、未払い残業代や労基署対応のリスクが高まる場合があります。
▼社会保険労務士アドバイス
変形労働時間制は便利な制度ですが、勤怠管理が複雑になりやすい点に注意が必要です。導入前に就業規則、労使協定、勤務表、給与計算方法をまとめて確認し、必要に応じて勤怠システムの設定や社内説明も行いましょう。
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。