企画業務型裁量労働制の定め方
企画業務型裁量労働制は、労働時間を実労働時間ではなく、あらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。導入には、対象業務や労使委員会の決議、本人同意、健康確保措置など多くの要件があります。就業規則や労働時間管理を整備し、適正に運用することが大切です。
企画業務型裁量労働制とは
- 企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する企画、立案、調査、分析を行う労働者について、実際の労働時間にかかわらず、労使委員会で定めた時間働いたものとみなす制度です。
- 制度の対象となるのは、業務の進め方や時間配分について、使用者が具体的な指示をしないことがふさわしい業務です。単に忙しい職種や残業が多い職種を対象にできる制度ではありません。
- 導入にあたっては、就業規則への規定だけでなく、労使委員会の設置、決議、労働基準監督署への届出、対象労働者本人の同意など、複数の手続を確認する必要があります。
▼社会保険労務士アドバイス
企画業務型裁量労働制は、労働時間管理を不要にする制度ではありません。みなし労働時間、深夜労働、休日労働、健康確保措置の記録管理は引き続き重要です。就業規則と実際の運用がずれていないか確認することが、労務トラブル予防につながります。
対象となる業務とは
- 対象となる業務は、事業の運営に関する事項について、企画、立案、調査、分析を行う業務です。企業の本社や本部など、重要な意思決定に関わる部門で行われる業務が想定されています。
- 対象業務に該当するかは、肩書きや部署名だけで判断するものではありません。労働者が実際にどのような業務を行い、どの程度裁量を持っているかを具体的に確認する必要があります。
- 上司から日々の作業手順や時間配分について細かい指示を受ける業務は、制度の趣旨に合わない場合があります。対象業務の範囲は、労使委員会の決議で明確に定めることが重要です。
▼社会保険労務士アドバイス
対象業務の記載が抽象的すぎると、運用時に対象者の範囲が広がりすぎるおそれがあります。就業規則や労使委員会の決議では、部署名だけでなく、業務内容、裁量の範囲、具体的な職務内容を整理しておくことが実務上有効です。
労使委員会の設置が適用の要件
- 企画業務型裁量労働制を導入するには、対象事業場に労使委員会を設置し、所定の事項について委員の5分の4以上の多数による決議を行う必要があります。
- 労使委員会では、対象業務、対象労働者の範囲、みなし労働時間、健康・福祉確保措置、苦情処理措置、本人同意の方法などを具体的に定める必要があります。
- 労使委員会の決議は、所定の様式により所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があります。届出をしていない場合、制度の適用が認められない可能性があります。
▼社会保険労務士アドバイス
労使委員会は形式的に設置するだけでは不十分です。委員の選出方法、議事録、運営規程、決議内容、労働基準監督署への届出状況を一体で確認しましょう。制度導入前に必要書類を整えることで、後日の説明責任を果たしやすくなります。
対象とならない労働者とは
- 対象業務に従事していても、制度の適用には対象労働者本人の同意が必要です。本人が同意しない場合には、企画業務型裁量労働制を適用することはできません。
- 新卒採用などの学卒者については、対象業務に従事しているように見える場合でも、業務経験が浅く、企画、立案、調査、分析を自律的に行う裁量が十分でないことが多いため、対象者とすることは慎重な判断が必要です。
- 業務経験や職務内容から見て、事業運営に関する企画、立案、調査、分析を主体的に行っていない労働者は、対象者として扱うことが適切でない場合があります。
- 対象業務に一部関わっていても、主な業務が定型的な事務処理、補助業務、上司の具体的指示に基づく作業である場合は、対象労働者に含められるか慎重な確認が必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
学卒者や経験の浅い労働者を対象に含める場合は、職務内容だけでなく、裁量の程度、上司からの指示の有無、本人同意の取得状況を丁寧に確認する必要があります。対象者を広く設定しすぎると、未払い残業代や制度無効のリスクにつながる場合があります。
労使委員会と役割
- 労使委員会は、制度導入時の決議を行うだけでなく、制度の運用状況を確認し、対象労働者の労働条件について調査審議し、事業主に意見を述べる役割を持ちます。
- 労使委員会では、労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情の内容や処理状況などを確認し、制度が適正に機能しているかを継続的に見ることが大切です。
- 制度導入後に賃金制度や評価制度を変更する場合には、対象労働者への影響を踏まえ、労使委員会に変更内容を説明することが求められる場合があります。
▼社会保険労務士アドバイス
労使委員会は、導入時だけ活動する組織ではありません。定期的に開催し、議事録を残し、労働時間の状況や苦情処理の内容を確認することで、制度の形骸化を防げます。人事評価や給与計算との整合性もあわせて確認しましょう。
健康・福祉確保と苦情の処理に関する措置の実施
- 企画業務型裁量労働制を導入する場合、対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置を、労使委員会の決議で定める必要があります。
- 健康・福祉確保措置には、特別休暇の付与、健康診断、年次有給休暇の取得促進、健康相談窓口の設置、配置転換、産業医等による助言指導などが考えられます。
- 苦情処理措置については、申出窓口、担当者、対象となる苦情の範囲、処理手順を明確にし、対象労働者が利用しやすい仕組みとして周知することが重要です。
▼社会保険労務士アドバイス(⑥健康・福祉確保と苦情の処理に関する措置の実施)
裁量労働制では、長時間労働が見えにくくなることがあります。勤怠システムで在社時間や労働時間の状況を把握し、一定時間を超えた場合の面談、休暇取得、産業医連携を運用ルールに落とし込むことが重要です。
労使委員会の決議に代えることができる協定事項
- 企画業務型裁量労働制では、労使委員会の決議が制度適用の中心となります。一方で、一定の事項については、労使委員会の決議により労使協定に代える取扱いが認められる場合があります。
- 労使委員会の決議に代えることができる事項を活用する場合でも、対象業務やみなし労働時間、健康・福祉確保措置など、制度本体の決議事項を省略できるわけではありません。
- 代替できる協定事項の範囲は、法令や通達、最新の厚生労働省資料に基づく確認が必要です。制度設計時には、就業規則、労使協定、労使委員会決議を整合させましょう。
▼社会保険労務士アドバイス
労使協定と労使委員会決議は似ていますが、役割や要件が異なります。どの事項をどの書面で定めるべきかを誤ると、制度運用に支障が出る場合があります。導入前に、届出書類、就業規則、協定書の整合性を確認しましょう。
その他の注意事項
- 企画業務型裁量労働制を導入しても、深夜労働、休日労働、年次有給休暇、休憩、労働時間の状況把握など、労働基準法上の管理が不要になるわけではありません。
- 2024年4月1日施行の改正により、裁量労働制について追加の対応が必要となった事項があります。既に制度を導入している企業も、決議内容や運用規程の見直しが必要となる場合があります。
- 制度の有効期間、本人同意の取得方法、不同意者への不利益取扱いの防止、同意撤回の手続、記録保存などは、就業規則や社内規程で明確にしておくことが望ましいです。
▼社会保険労務士アドバイス
企画業務型裁量労働制は、制度設計と運用管理の両方が重要です。導入後も、対象者の業務実態、労働時間の状況、健康確保措置、給与計算への反映を定期的に点検しましょう。制度変更時には、労務相談を活用することも有効です。
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。