時間外・休日労働の定め方①
従業員に残業や休日出勤を依頼するとき、就業規則に定めがあるだけで問題ないと考えていませんか。法定労働時間を超える労働や法定休日の労働には、原則として36協定の締結・届出が必要です。また、残業を命じる根拠や上限時間の管理も欠かせません。本記事では、時間外・休日労働の定め方について、法定労働時間と休日の基本から災害時の例外、36協定の効力と限度時間まで、企業が確認したいポイントを解説します。
法定労働時間と法定休日
- 労働基準法では、労働時間を原則として休憩時間を除き1日8時間、1週40時間以内と定めています。就業規則で定める「所定労働時間」と法律上の「法定労働時間」は異なるため、残業を判断するときは両者を区別することが必要です。
- 休日は、原則として毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上与える必要があります。この法律上必要な休日が法定休日です。4週4休制を採用する場合には、就業規則などで4週間の起算日を明らかにすることが必要です。
- 週休2日制でも、すべての休日が法定休日になるわけではありません。法定休日以外の所定休日に働いた場合は、週の法定労働時間を超えるかなどで時間外労働を判断します。変形労働時間制や一部の小規模事業場の特例にも確認が必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
就業規則では、始業・終業時刻、休憩、休日に加え、週の起算日と法定休日を明確にしておくことをお勧めします。休日の区分が曖昧なままでは、勤怠集計や割増賃金の計算に誤りが生じやすくなります。勤務表と給与計算の設定を照合し、休日出勤をした際に、法定休日労働と時間外労働を正しく区分できる運用に整えましょう。シフト制の場合も、担当者ごとに判断が変わらない仕組みが大切です。
非常時災害の場合
- 災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合は、労働基準法第33条に基づき、必要な限度で時間外・休日労働を行わせることができます。通常の36協定による労働とは別の例外であり、適用要件の確認が必要です。
- この例外を利用する場合は、原則として事前に所轄労働基準監督署長の許可を受けます。ただし、事態が急迫して許可を受ける時間がない場合は、事後に遅滞なく届出を行います。会社の判断だけで手続きが不要になるわけではありません。
- 人命や公益を守るための緊急対応などが対象となり得ますが、単なる繁忙や納期対応など、通常の経営上の必要は原則として認められません。また、この制度による労働でも、時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金の支払いは必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
災害時の対応を就業規則や事業継続計画に記載していても、それだけで労働基準法第33条を適用できるわけではありません。発生した事由、対応の緊急性、対象業務、従事者、実際の労働時間を記録し、監督署への相談や手続きを速やかに進めましょう。緊急対応が長引く場合には、交代要員や休息時間の確保も重要です。通常業務への復帰後は36協定に基づく管理に戻し、例外運用の常態化を防ぎましょう。
残業は労使の合意で実施する
- 法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働を行わせるには、原則として36協定が必要です。事業場の過半数労働組合、これがない場合は労働者の過半数を代表する者と、対象業務や延長時間などを書面で協定して届け出ます。
- 36協定を締結・届出しただけで、個々の従業員に残業義務が生じるわけではありません。残業を命じるには、労働契約や、合理的な内容で周知された就業規則などに根拠が必要です。毎回の個別同意が必ず必要という意味でもありません。
- 過半数代表者は、36協定を締結する代表者を選ぶことを明らかにし、投票や挙手など民主的な手続きで選出します。会社の指名は認められず、労働基準法上の管理監督者は代表者になれません。パートなどを含む全労働者が選出の母数です。
▼社会保険労務士アドバイス
就業規則の残業条項と36協定は、それぞれ役割が異なります。時間外・休日労働を命じる場合があることや、その手続きを就業規則で確認し、36協定の対象業務や時間数と整合させましょう。採用時の労働条件の説明や、代表者を選出した記録の保存も大切です。また、育児・介護や妊産婦の請求に伴う残業制限など、個別に適用される保護規定を確認し、一律の残業命令によるトラブルを防ぎましょう。
事業場ごと監督署へ届出が必要
- 36協定は、原則として会社全体で一つ作るのではなく、本社、支店、工場などの事業場ごとに締結し、それぞれを管轄する労働基準監督署長へ届け出ます。事業場の単位は、所在地や組織上の独立性などの実態に応じて判断します。
- 届出は、法定時間外労働や法定休日労働を開始する前に行う必要があります。協定を社内で作成しただけでは足りず、有効期間が切れた場合にも注意が必要です。継続して残業を予定するなら、期間満了前に次の協定の締結・届出を進めます。
- 複数の事業場を持つ企業では、一定の要件を満たす場合に本社一括届出を利用できます。ただし、届出をまとめられることと、協定を締結する単位は別です。各事業場で適切な労使当事者と協定し、届出後は従業員への周知も行います。
▼社会保険労務士アドバイス
横浜・神奈川エリアで複数の拠点を運営する企業では、事業場別の協定一覧を作成すると管理しやすくなります。管轄監督署、協定の起算日、有効期間、過半数代表者、届出状況をまとめ、更新担当者と期限を決めておきましょう。新店舗の開設や組織再編の際は、既存の協定がそのまま使えるかを確認する必要があります。本社一括届出を利用する場合も、拠点ごとの協定内容と周知状況を確認しましょう。
36協定は免罰効果
- 36協定の「免罰効果」とは、適法な協定を締結して届け出ることで、その範囲内の時間外・休日労働について、労働基準法の労働時間・休日規制違反として処罰されない効果をいいます。過去の違反を後から免責する制度ではありません。
- 36協定があっても、協定した時間数や休日労働の日数、法律上の上限を超える働かせ方は認められません。特別条項を設けている場合も、適用できる事情や発動手続きを守る必要があります。届出済みという理由だけでは適法になりません。
- 免罰効果は、割増賃金の支払義務や安全配慮義務をなくすものではありません。36協定の有無にかかわらず、実際に行わせた時間外・休日労働の割増賃金は必要です。固定残業代を支給していても、協定の締結・届出や労働時間管理は必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
実務では、協定の届出を終えることが目的になり、その後の勤務実態の確認が不足する場合があります。月末の給与計算で初めて超過が分かることを防ぐため、勤怠システムなどで月の途中から実績と見込みを把握しましょう。協定時間に近づいた場合の報告先、業務の振り分け、残業承認の手順を決めることも有効です。未払い残業代の点検と健康管理を併せて行い、協定の範囲内でも過重労働を防ぐ運用が大切です。
36協定の限度時間
- 一般的な時間外労働の限度時間は、原則として月45時間・年360時間です。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者は、月42時間・年320時間となります。これらの限度時間には、法定休日労働の時間は含めません。
- 臨時的な特別の事情があり、特別条項付き36協定を適切に締結・届出した場合でも、一般則では時間外労働は年720時間以内です。原則の月の限度時間を超えられるのは年6か月までであり、恒常的な人手不足への対応には利用できません。
- 一般則では、時間外労働と法定休日労働の合計を単月100時間未満に抑える必要があります。さらに連続する2・3・4・5・6か月の各平均を、すべて月80時間以内とします。この合算の制限は、特別条項がない場合にも適用されます。
- 年720時間の上限には法定休日労働を含めませんが、単月100時間未満と複数月平均80時間以内の判定には含めます。また、自動車運転業務、医師、建設事業の災害復旧・復興などには特例があるため、業種や業務別の確認が必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
上限管理では、時間外労働のみの集計と、法定休日労働を合算した集計の両方を用意しましょう。複数月平均は協定の年度が替わっても区切らず、前年度から連続して確認する必要があります。特別条項を適用する場合は、具体的な事情、実施した労使間の手続き、健康・福祉確保措置の実施状況も記録しましょう。法律の上限まで働かせることを前提にせず、自社の協定時間を守れる業務量と人員配置を検討することが大切です。
36協定の特別条件付き協定の延長
- 原則の限度時間を超えて時間外労働を行わせるには、「特別条項付き36協定」の締結・届出が必要です。適用できるのは、通常予見できない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合であり、恒常的な人手不足は対象になりません。
- 特別条項には、限度時間を超える具体的な事情、延長時間、月の限度時間を超える回数、割増賃金率、発動時の労使間の手続き、健康・福祉確保措置などを定めます。「業務上必要な場合」といった曖昧な理由だけでは認められません。
- 一般則では、時間外労働は年720時間以内、月の限度時間を超えられるのは年6か月までです。法定休日労働を含めて単月100時間未満、連続する2~6か月の各平均80時間以内も守る必要があり、労使の合意だけで上限を超えることはできません。
- 特別条項を発動するときは、協定で定めた協議や通告などの手続きを、限度時間を超える前に実施します。その都度、対象者や適用する事情、手続きの日時・内容を記録し、協定した健康・福祉確保措置も確実に実施することが必要です。
▼社会保険労務士アドバイス
特別条項は、協定に記載しておけば自動的に適用できるものではありません。勤怠実績から限度時間の超過を事前に予測し、発動の判断、労使間の手続き、対象者への健康配慮を一連の運用として整えましょう。医師による面接指導や勤務間の休息確保など、協定した措置の実施記録も残すことが大切です。なお、特別条項による「労働時間の延長」と「協定の有効期間の更新」は別であり、更新時には改めて締結・届出が必要です。
就業規則は、働き方改革関連法の対応を視野に入れて作成する必要があります。
法改正は企業にとって非常に重要な内容となります。
働き方改革関連法の改正の主な柱は、以下となります。
- 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働契約法
- パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定に関する特別措置法
- じん肺法
段階的に施行されるため、いつから、どのような改正が行われるかをチェックしておく必要があります。また中小企業や一部業務等に猶予措置などもあります。
■参考書籍■
THE FIRST STEP! 就業規則をつくるならこの1冊【第6版】
社会保険労務士 岡田良則箸
株式会社自由国民社 発行
働き方改革関連法の改正は、都度行われ、施行開始時期に合わせてアップデートも必要です。従いまして、就業規則は一度作成したら終わりでは
また就業規則は作成した後の運用が大切です。作成した就業規則は従業員に周知しなければならず、従業員から就
そのような理由から、当事務所にて就業規則を作成する場合は、顧問契約をご検討頂いております。